多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でお悩みの方へ

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵胞が成熟するまで通常より時間がかかり、その結果排卵しにくくなる排卵障害の1つです。
成熟途中の多くの卵胞が卵巣内に留まるため、多嚢胞性卵巣症候群と呼ばれます。

PCOSの治療には多少時間がかかりますが、根気よく治療を行うことでほとんどの方が妊娠可能です。

PCOSの原因

PCOSの主な原因は、卵胞が成熟するまでの過程に何らかの原因で異常が生じ、卵胞が育たなくなる「卵胞の成熟障害」です。

PCOSの治療

  • 一般不妊治療(タイミング法、人工授精)
    飲み薬・・・クロミッド、フェマーラなど
    注射剤・・・FSH、hMG、hCGなど

PCOSの治療は有効域が狭く、薬が少量だと反応せず、少し多くしただけで過剰に反応する傾向にあります。注射で過剰に反応すると、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になります。

注射を多く使用しないと排卵できないほど重症な場合や、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群を予防できない場合は体外受精・顕微授精をおすすめします。

  • 高度生殖補助医療(体外受精、顕微授精)

PCOSは卵胞の成熟障害が主な原因ですので、たくさんの卵胞(つまり卵子)をどれだけ完熟に近い成熟卵として採卵できるかがポイントです。
卵子が未熟の段階で採卵を施行すると、未熟卵子と未熟すぎて卵胞壁から卵子が剥がれない卵胞(空卵胞)ばかりを穿刺することになります。

PCOSの場合でも成熟卵子を採卵できれば、1回の採卵で結果が出ることが多いです。

体外受精における卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防

  1. 採卵と胚移植を別周期でおこなう。
    OHSSは胚を移植して妊娠した際に重症化しやすいため、採卵と胚移植の周期をわけて治療することで成熟卵の確保に専念でき、なおかつOHSS重症化も予防することにつながります。
  2. 排卵誘発にhCGは使わず、GnRHアゴニストを使用する。
    排卵を誘発させる際に使用するhCGは効果が持続する時間が長いため、それがOHSSを引き起こす原因とされています。そこで効果が持続する時間が短いGnRHアゴニストを使用することで、OHSSを回避することができます。

    OHSS予防を可能にする、PCOSの方の卵巣刺激の多くはクロミッド+hMG+アンタゴニスト法になります。

最後に

PCOSは妊娠環境が整えば、妊娠する可能性は十分にあります。特に体外受精・顕微授精となれば、条件が整いやすく、妊娠する方が多くいらっしゃいます。
なかなか妊娠せずお悩みの方は、是非一度ご相談ください。